日本の医薬品開発はこの5年で大きく変わってきました。日本で行うべき医薬品開発が海外に流出するという、いわゆる「治験の空洞化」が深刻な問題になっています。一方で、治験のグローバリゼーションは大きな潮流となり、国際共同治験が医薬品開発の基本になりつつあります。しかしながら、国際共同治験の数は増加していますが、ほとんど第Ⅲ相試験の段階にある後期試験であり、探索的臨床試験、POC試験などの医薬品開発の方向性を決定する早期臨床試験は数少ない状態です。この早期臨床試験さえも海外で行われることは、我が国の生命科学の後退をもたらすものであると、我々、臨床薬理学者は強い危機感を持たずにはいられません。臨床試験に積極的に取り組んでいる臨床薬理学専門家を有する全国の6大学附属病院が協力して「グローバル早期臨床試験推進のための大学病院ネットワーク(J-CLIPNET)」を2007年に早期臨床試験の活性化をめざして設立しました。
J-CLIPNETはこれまで、既に患者対象のグローバル早期臨床試験を実施し、人材育成においても大きな実績をあげてきました。また、J-CLIPNETはアジア共同試験の推進を図るために、韓国のKoNECT/CCCPや中国の2大学病院と提携を結んでいます。これらの取り組みを通じてJ-CLIPNETでは世界同時開発の中で軽視されがちであった「人種差による反応性」、「有害反応に関する情報」などを得ることが可能であり、ともすると過量投与にさらされがちなアジア人における至適薬物治療の確立のためにアジア試験に取り組んでいます。
J-CLIPNETは我が国における唯一の早期臨床試験ネットワークとして、革新的な治験を含む臨床研究の分野における活動を推進するつもりです。